侯爵様のユウウツ 成金令嬢(←たまに毒舌)は秀麗伯爵がお好き?
「リードマン、今なんと? 『血を分けた愛しい息子』と聞こえたような気がしましたが?」

「ええ奥様、そう言いましたからねぇ」
にっこり

「侯爵様、これはどういう事ですの?」

鋭く尖った刃のような視線を向けながら、静かな声でお尋ねします。

レイモンド様はあさっての方を向いて、
「僕はあの時『母の命日』と言っただけで、『僕の母』とは一言も言っていない。毎日誰かの母の命日だろう? 少しも間違った事は言っていないなぁ……」
と、空っとぼけた表情で白々しく語尾を上げる。

……んだとぉぉぉっ!? 

「あの時は飲み足りなかったのだ、一人で飲んでもつまらないだろう?」
 
よくもいけしゃあしゃあと言いやがったな、レイモンドぉぉっ!!

と思った時には、ソーサーが目の前の嘘つき侯爵の胸にぼすっと命中、カップは的を外し、ごろりと絨毯に転がりました。
更にお砂糖の入った入れ物も宙を舞ってます。

「痛っ、エセル……何をするんだ!! 危ないっ、うわっ、砂糖がかかったっ!!」

「痛いのは生きてる証拠よ、この性犯罪者ぁ!! あんたの吐いた嘘のせいで、取り返しのつかない事になってるんでしょうがぁぁっ!!」

ああ……、でもお腹の子に罪はありません。ごめんねベビーちゃん、あなたは何も悪く無いのよ。
矛盾してるけど、お母様はあなたの事を愛しているわ。
良い子良い子。お腹を見ながら、よしよしなでなで。

そして顔を上げた私は、両眉を上げ活き活きとした表情を見せるリードマンと目が合いました。

うっ、ま、まずいっ、バレたかも……。

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