御曹司のとろ甘な独占愛
　この気候のせいで、最近の店内業務はどちらかといえば緩やかで、時間を持て余すことが多い。

　その反対に、伯睿はとても忙しそうにしている。
　今月は台北貴賓ジュエリーショーが開催され、来月にはオートクチュール・コレクションが控えている。そのため会議が多く、比例して残業も多い。
　最近は別々に帰宅することもあった。

　一緒に帰宅しても、伯睿は彼の自室――アトリエに籠もりがちで、朝の食事の時以外は、なかなか顔を合わせる時間もない。


　彼が現在アトリエで制作しているのは、『華翡翠』コレクションの記念すべき十作品目だ。

　伯睿が『華翡翠』コレクションを一人で手がけていると知ったのは最近のこと。ランチに誘われて、伯睿の副社長室にこっそりと向かった時だった。

　前に一度入室したことがあるのに、その時には色々と切羽詰っていたので、正面と左右以外、一花の視界に入っていなかったらしい。
　改めて入ってみると、広いガラス張りの窓と向かい合う壁際には、額縁に入った歴代代表作のデザイン画が美しく飾られていた。

　その真下には、ライトアップされた翡翠たちが、まるで美術館のように展示してあり――展示してある作品が全て『華翡翠』コレクションであることに気がついて、一花はこぼれんばかりに目を見開いた。
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