御曹司のとろ甘な独占愛
　貴賓翡翠で働いていたとしても一生に一度、お目にかかれるかどうか……という最高峰の作品たち。
　
　その美しさに感激して息をのむ。

　翡翠や宝石の原石の選定、削り出し、磨き上げ、デザインから制作まで、『華翡翠』コレクションに携わることは伯睿が全て一人で行っているという話を聞いて、一花は更に驚いたのだった。

　その『華翡翠』コレクションのお披露目は、七月初旬にパリで行われるオートクチュール・コレクション最終日、そして『華翡翠』コレクション十周年記念セレモニー。

　つまり、本当に制作時間がない。

　従来通りならば作品は既に完成している頃なのだが、十作品目は世界的に注目を集めており、どこからデザイン画やデータが流出するかわからないため、敢えて時期をずらして制作することになったそうだ。

　今回、コレクションカタログ等の印刷物には一切含まれる予定もないので、伯睿の予定で好きに制作ができた。

　制作する時間はそれまでにもあったそうだが、「どうしても今、この“瞬間”にある“美しきもの”を表現したくて、制作もしていなかったんです」と、伯睿はアトリエに籠もり出す前に話していた。
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