御曹司のとろ甘な独占愛
 自宅のアトリエは、宝飾品を作るための機械や専用器具、デザインや画材、果てには無骨な原石などなど……、一花が部屋に踏み込むの戸惑う品々で溢れている。

 仕上げ専用のテーブルの上には、美しい硝子製の宝石箱があり、中には極上の翡翠たちが花開く時を待つように鎮座していた。
 翡翠たちのあまりの神聖さに、一花はアトリエの中で言葉を発することさえ憚られてしまう。

 ドアの外からだって、真剣に作業を進める伯睿には声をかけ難い。
 だから時々、彼があまりにもベッドに来るのが遅い時に、肩にそっと毛布をかけに行く。

(少しでも、何か手伝えたらいいのに……)

 伯睿の天才的なクラフツマンシップが作り上げる、精巧で芸術的な『華翡翠』コレクション作品は、熟練の職人の技を持ってしてでも、手伝えることは少ないだろう。
 ましてや素人の一花に手伝えることなど皆無に等しい。

 けれど、毎日忙しく寝る間も惜しんでいる彼の姿に、一花はそう思わずにはいられなかった。
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