御曹司のとろ甘な独占愛
　ここは店内でもあるし、副社長のプライベートなことを答えるべきではない。もともと貴賓翡翠の関係者にバレないように付き合っているのだから尚更だ。

（そう言う彼女は何者なんだろう？　伯睿の姉妹？　が、いるなんて聞いたことないし……じゃあ従姉妹？　……まさか女友達？）

　彼女の正体を予想しながら、「でも伯睿って、女友達が居そうな人じゃないなぁ」と予想を一つ訂正する。

　彼は通常、とっても冷淡に他人と接する人だ。
　女性社員や販売員にも人気はあるが、誰一人優しく接されたことはないらしい。

「だから、劉副社長にあの王子様みたいな仕草で優しくされたぁい！　って妄想してる女子が多いの！」と、これは陳店長情報だった。
　いつだったか、一緒にランチを食べている時に「イチカ、あなた気をつけなさい！」と陳店長が突然言ってきたことがあったのだ。

（……じゃあ、一体誰……？）

　人生で一度も女性とお付き合いをしたことがなかった伯睿には、元彼女も存在しない。
　一花以外に恋した女性はいないと言っていたし、誰かに告白した経験もなければ、女の子にプレゼントを贈ったことすらなかったのだ。
　そんな彼に、こんなに堂々と接点を持てるのは血縁者しかいない。

　それにしたってこの雰囲気は怪しい。
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