御曹司のとろ甘な独占愛
 朝顔の花一時という諺は、確かに花の盛りがきわめて短期間であることを指している。
 けれど伯睿は、一瞬を永遠と捉えて大切にするような人だ。
 伯睿が諺を解釈するならば、“一瞬を大切に生きましょう”という意味に捉えるに決まっている。
 怡菲の言うような酷く捻くれた解釈はしないはずだ。

(だから絶対に、私と伯睿の関係は、この子の言ってるようなものじゃない……。伯睿のお母様の言葉だって……本当かどうか……)

 子供の頃に伯睿が言っていた言葉を思い出す。
 確か、お母様とあまり仲が良くないような印象を受けた。

 そう思うのに、どうして婚約者がいることを今まで隠されていたのだろうという気持ちが、心に暗い影を落とす。


 一花は何も反論できずに、茫然自失で彼女の笑い声を聞いていた。

「伯睿のお母様から、伯睿が私と結婚の前にアナタと恋人ごっこをしているのを聞いて――遊びとは言えど、気分が悪いでしょ? だから、こうしてご挨拶に」

 彼女は親切なことをしたような顔で、満足気に肩を揺らす。
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