御曹司のとろ甘な独占愛
「お父様もお母様もとっても喜んでいたけど……私は、全部お断りしたわ。だって……私は、この十年間! 伯睿を待っていたんだもの……!!」
怡菲のとんでもない発言に、伯睿は驚き、目を見開いた。
婚約の件だって断ってきた。大切な人がいることも伝えてきた。だのに一体何を思って、怡菲が自分を十年間も待っていたのかわからない。
(勘違いにも程があるな。――しかし今は改めて断り、関係性を明白にしなければ)
伯睿は怡菲へ向き直ると、ここで正式に決着をつけるために、丁寧に頭を下げた。
「……大変申し訳ありませんでした」
「ううん、そんな……。だって、伯睿は私に愛を誓って『華翡翠』コレクションを作ったんでしょう……?」
伯睿の顔色を伺うように、怡菲は上目遣いで伯睿の胸元に縋る。
「……俺が、何に愛を誓うだって……?」
――二年は帰ってくるな。その間に全て終わらせる。私に任せておけ。
伯睿の中で響いたのは、怡菲の声ではなく父の声だった。
彼女が二十歳になった頃と言えば、伯睿の父親が「ミラノへ行け」と言いだした頃だった。
怡菲が『華翡翠』コレクションを彼女のものだと思いこんでいたことを、父は三年前から知っていたのだろう。
だから伯睿がミラノへ行っていた二年間、父は怡菲へお見合い写真を送るなどして、彼女の恋心を伯睿から逸らそうとしていた。
怡菲のとんでもない発言に、伯睿は驚き、目を見開いた。
婚約の件だって断ってきた。大切な人がいることも伝えてきた。だのに一体何を思って、怡菲が自分を十年間も待っていたのかわからない。
(勘違いにも程があるな。――しかし今は改めて断り、関係性を明白にしなければ)
伯睿は怡菲へ向き直ると、ここで正式に決着をつけるために、丁寧に頭を下げた。
「……大変申し訳ありませんでした」
「ううん、そんな……。だって、伯睿は私に愛を誓って『華翡翠』コレクションを作ったんでしょう……?」
伯睿の顔色を伺うように、怡菲は上目遣いで伯睿の胸元に縋る。
「……俺が、何に愛を誓うだって……?」
――二年は帰ってくるな。その間に全て終わらせる。私に任せておけ。
伯睿の中で響いたのは、怡菲の声ではなく父の声だった。
彼女が二十歳になった頃と言えば、伯睿の父親が「ミラノへ行け」と言いだした頃だった。
怡菲が『華翡翠』コレクションを彼女のものだと思いこんでいたことを、父は三年前から知っていたのだろう。
だから伯睿がミラノへ行っていた二年間、父は怡菲へお見合い写真を送るなどして、彼女の恋心を伯睿から逸らそうとしていた。