御曹司のとろ甘な独占愛
 タクシーが到着したのは、常盤慧のお膝元――ホテル・エテルニタ台北だった。

 ロビーに慧が現れた途端、スタッフたちが一斉に頭を下げようとするのを、慧は片手を上げて制した。スタッフたちは一瞬の判断で慧を一般のお客様のように扱い、ロビーは瞬時に日常を取り戻す。

 一花はほんの僅かな瞬間の出来事にビックリして、これはドラマの撮影なのかもしれない、と現実逃避した。


 伯睿たちが乗り込んだエレベーターは五階で停まった。
 それから少しの間をおいて、慧と一花も同じ階へ向かう。

 五階は、高級香港料理店だった。
 フランス料理店のような雰囲気のレストランで、一見すると中華料理店ではないように見える。

《貴賓翡翠の劉伯睿、来てる?》

《ええ。先ほどお見えになりましたが……》

 受付で慧が問いかけると、男性スタッフは小さく頷いた。
 慧はそのスタッフを連れて、店内へ入っていく。一花は後ろをついて行って良いのかわからず、とりあえず受付の前で待っていることにした。

 その後、一花が案内されたのはフロアの端のテーブルだった。
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