御曹司のとろ甘な独占愛
エピローグ
――それを見た瞬間、言葉を失った。
胸がじんわりと締め付けられ、あたたかく小さな震えがあふれだし、やがて全身に達した頃。
心の奥底に眠る泉からせり上がってくる何かに、双眸は熱く埋め尽くされた。
この気持ちをなんと言い表せばいいのかわからない。
それでも何か言葉にしようと口を開けば、大粒の涙がこぼれてしまいそうだと思った。
まるで眩しい光のような一花の姿に、俺は目を細める。
研ぎ澄まされた静寂は、今や確かな永遠を刻み始めている。
あの“美しきもの”から生まれた青碧は“一粒の翡翠”となり、俺の大切な“美しき者”の薬指で輝いていた。
森に囲まれたガーデンテラスのあるチャペルで、荘厳な雰囲気に包まれながら、神聖な未来を誓う。
“あの瞬間”を大切に生き、そして“美しきもの”に対して誠実であったからこそ、運命が結ばれたのだと全てに感謝しなければならない。
「……『いつまでも幸せに暮らしました』、だね?」
お伽噺のお姫様のように純真な瞳を輝かせ、彼女は幸せそうに微笑んだ。
「ええ。いつまでも、いつまでも……きみを幸せにすることを、誓います。溺愛するので――覚悟してください」
「っ……はい!」
花嫁姿の一花を抱き上げて廻る。純白に重なるセレニティブルーのドレスが、大輪の花が咲き誇るように舞い上がった。
視線を絡ませ、花弁のような桜色の唇に、静かに触れるだけのキスをする。
「愛しています、一花」
純真さをかきあつめたかのような瞳が、眩そうに優しく細められた。
俺は……今、この瞬間のことを、永遠に覚えていようと思った。
――これが、“美しきもの”を感じた瞬間なのだと。
【完】