御曹司のとろ甘な独占愛
今度は正しく扉がノックされる。伯睿が入室を促せば、よく見知った青年が扉を開けた。
「お。噂通りいたんだな。ミラノから帰って来たって聞いたぜ。しばらくこっちにいるらしいじゃねぇーか」
スポーツ選手のような体格の爽やかな男は、勝手知ったる我が家のように入室し、扉から一番近い応接用のソファへどかりと腰を下ろす。
「オレも東京から帰ってきてたから、寄ってみようと思ってな。どうなんだ?」
「そっちがどうなんだ? 日本支社長」
伯睿は彼の登場に少しの安堵を見せると、少年時代から続く信頼と気安さを含ませて、素っ気なく片眉を跳ね上げる。
「オレ? うーん、元気」
「そんなことは聞いてないな」
「マジか」
陳宥翔(チェン ヨウシャン)はニカッと白い歯を見せて笑う。
宥翔は伯睿の面倒をよく見てくれていた執事の孫で、伯睿にとっては幼馴染のような存在だった。