御曹司のとろ甘な独占愛
「私はこの一粒の翡翠と出会った瞬間、本当に感動しました。その時のような感動を、お客様もお届けできたら……。そんな想いで、日本貴賓翡翠に入社しました」

「なるほどね。その指輪を見せてもらってもいいか?」

「大丈夫です。どうぞ」

 陳支社長は両膝に手のひらを置いて、よいしょとソファから立ち上がると、社長デスクへ向かう。
 デスクの引き出しから、セーム革のクロス、ルーペ、ペンライトを取り出すと、胸ポケットに入れていた宝石取い扱い用の手袋を装着した。

 一花は大切な指輪を外し、ソファに腰掛け直した陳社長へ手渡す。

「台座は純金だ。アームの装飾だけで言えば細部まで技巧を凝らしてあるが、まだ若い」

 陳支社長はクロスで翡翠の指輪を丹念に磨き、ペンライトを当てて、ルーペを覗く。

「翡翠の研磨は素晴らしいな。磨きも完璧で、迷いがない。それに、この質だ。ライトを当てるまでもなく……ロウカンだな」

「ろ、ロウカン!?」

 貴賓翡翠の翡翠を紹介する重要な用語として知ってはいたが、まさか自分の指輪がそれだとは思わなかった。
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