御曹司のとろ甘な独占愛
「英語ができれば大丈夫! その反応ってことは、海外転勤は恋人や婚約者がいて無理そう? あっ、結婚してたっけ?」

「いえ……。お恥ずかしながら、生まれてこのかた彼氏はいません……」

「そうなの? 今までに、好きになった人とかは?」

「あ、えっと……その翡翠の指輪をくれた人なんですけど……。連絡先も交換していないので、もう望みはなくって」

 ははは、と乾いた笑みを浮かべる。

 そんな一花の右手を取り、陳支社長は翡翠の指輪を薬指へ返す。
 そして、とても柔らかな笑みを浮かべた。

「――大丈夫。そいつのクラフツマンは、絶対見つかる」

 その笑みは、どこか遠くにある幸せな未来を見つめる人のような、温かさがあった。


 一花はそんな支社長の言葉に背中を押され、笑顔で頷く。

「はい! 頑張ります!」

「なんてったって、台湾は狭いからな!」

 最後には適当そうなことを口走ったていたが。
 そんな言葉に、なぜだか、本当にすぐに会えそうな予感がしてきていた。
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