御曹司のとろ甘な独占愛
「主に言語面で少し不安ですが……、精一杯、頑張ります!!」

 中国語は今から必死で勉強をしなくてはいけないが、そんな不安よりも、純粋にワクワクしている気持ちが勝っている。

「その顔じゃ、心配はいらなそうね。あっちでも頑張りなさい!」

 店長は胸を撫で下ろした様子で口元を緩め、激励の意味をこめて、バシッと一花の肩を叩いた。

「引き継ぎは、育児休暇から復帰する篠原さんにね」

 篠原さんは以前、常盤様を担当していた先輩だった。彼女が戻ってくるのなら、常盤様のことも心配しなくて大丈夫そうだ。

「わかりました。今まで、大変お世話になりました」

「いいえぇ。東京本店の売り上げノルマ達成がこれから大変になるわ~。まあ、うちは個人ノルマがないだけラッキーなんだけどっ」

 店長は茶目っ気たっぷりに言うと、パンパンッと手を叩く。

「さあ! 開店の準備を始めましょ!」

「はい!」




 それからの一ヶ月は、目まぐるしく過ぎ去っていった。

 お世話になった方々にお礼とお別れを告げて……実家にあった荷物をまとめ、あの時のようにトランクへ詰め込む。

 ――そして、いよいよ。引越しの日を迎えた。
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