御曹司のとろ甘な独占愛
第二章 幼き日々のまぼろし
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 しとしとと雨が降る小さな庭。
 一花は窓辺で頬杖をつき、雨粒が落ちた先を眺めた。流れた雨の雫を弾くように、朝顔の蕾がふるりと揺れる。

 この朝顔の種を採取し、翌春に種まきをし始めたのは小学一年生の頃。それ以来、生まれて初めて世話を任された命を、絶やさずに脈々と受け継いでいる。
 十歳になった一花にとって、この朝顔は人生で一番長い付き合いをしている植物だった。

 白い蕾の先には、天色の鮮やかなドレスが見え隠れしている。きっと夏には天色の朝顔たちが、うだるような暑さを涼しげに彩ってくれるのだろう。一花はその様子を想像して、小さく微笑んだ。

 一花は窓辺をはなれると、部屋で広げっぱなしにしていた大きなトランクに向かい合う。それからお気に入りの朝顔の花簪を手に取ると、綺麗に畳んだ大好きなワンピースと一緒に詰めこんだ。


 待ちに待った夏休みが始まり、一週間が経った頃。
『サマープログラム』に参加するため、一花はオーストラリア、シドニーに来ていた。
 今日から夏休み中の二週間を、英語圏以外の十歳から十二歳の生徒たちが共に過ごす。

 七月末のシドニーの季節は冬。
 日本の冬ほど寒くないように感じられるのは錯覚だろうか。強い太陽光が照りつけ、目を覆いたくなるほど眩しかった。

 シドニー郊外にある語学学校へ到着してからクラス分けの試験を受けた後、ホストファミリーと対面するための教室へ案内された。
 今日から帰国日までを、生徒達は二人一組になってホームステイ先で過ごすことになる。
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