御曹司のとろ甘な独占愛
 先生の指示で、次々にホストファミリーとの対面が進んでいく中、一花の番は未だ巡ってこない。

 一組目の生徒たちが教室から出て行ってから何分も経ち……とうとう最後になった。教室に残されたのは一花と、一番離れた場所に座っていた一人の男の子。

「遅くなってごめん! イチカ。ハクエイ。二人とも、心配かけたね」

 一花の名前を呼んだのは、チェック柄の派手なベストを着込んだ若い男性だった。あちこちに飛び跳ねた赤毛に、お茶目なグリーンアイズが輝いている。明るくて、優しそうな人という印象を抱く。

「僕はジョン・パーカー。よろしく。さあ行こう!」

 彼は笑顔で手招きをする。一花は手荷物を抱え、椅子を立った。

 男の子も、ゆっくりと男性の側に歩みを進める。

 すっと通った鼻筋に、透き通るような繊細な肌。男の子が歩くたびに、艶のある漆黒の髪がサラサラと軽やかに舞う。
 冷静沈着な面持ちは、触れるとこちらに冷たさが移りそうなほど、感情が読めなかった。

 いつも学校で見る男子とはまるで違う、絵本の中から飛び出してきた王子様のような少年。

 ピンとした背筋、革張りの靴、ドット柄のシャツに上質そうなベスト、ネクタイまで結んだ姿は、血統書付きの猫のような印象だった。

 きっと自分とは住む世界が違う人だ。
 ここでこうして出会わなければ、一生袖振り合うこともなかっただろう。

 その彼が、ホストファミリーの男性の前でなく、一花の前で立ち止まり、彼女を見つめたまま、動かない。
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