御曹司のとろ甘な独占愛
 あの美しい出会いから、あっという間に一週間が過ぎようとしてた。

 伯睿と一花は毎日一緒に登下校をして、クラスでもよくペアでワークに取り組んでいる。勿論ランチの時間も一緒に過ごすので、二人はどんどん仲良くなった。
 そんな二人の距離に、彼らに関わりのある先生達は「王子様は今日も可愛い妹にスウィートね」と挨拶のようにからかった。

(やっぱり……私はハクエイにとって、可愛い妹、なのかな)

 そう考えては伯睿が否定してくれることを、ほんのわずかに期待してしまう。いつも自分を引っ張って行ってくれる王子様に、小さなときめきを感じずにはいられなかった。


 夕飯やシャワーを終えてから、一花と伯睿はパーカー家のダイニングで勉強会をして過ごす。

 今夜も勉強のお供にと、二人は蜂蜜とシナモンがたっぷりと入ったホットミルクを作った。
 ジョンから作り方を教えてもらった、“パーカー家のホットミルク”は、既に二人の思い出の味になりつつある。

「そうだ。イチカの名前は漢字でどう書くの?」

 ホットミルクのマグカップをことりとテーブルに置きながら、伯睿が尋ねる。

「私の名前は、漢字で……」

 一花は日記帳を開き、新しいページに山越一花と漢字で書く。
 ノートの中心からやや上の方に、よく見慣れた丸っこい字が踊った。

「……一花」

 伯睿はそのページを指先でなぞりながら、しっとりと静かな夜に溶けていくような声で、一花の書いた文字を読み上げた。

 今まで何度もイチカと名前を呼ばれていたのに、今初めて、彼に本当に名前を呼ばれたかのような感動がある。イチカという音に、鮮やかな色がついたみたいだ。こんなに、名前を呼ばれて嬉しいと思ったことはなかった。

(……その声で、もっと、呼んでほしい)
< 38 / 214 >

この作品をシェア

pagetop