御曹司のとろ甘な独占愛
 休日は、朝からジョンの運転で遠方にある大きなスーパーマケットに行って、ホストマザーのマーガレットが一週間分の食材を買い込むのを手伝った。

 お昼にはパーカー家の美しい庭を眺めながら、ガーデンテラスでバーベキュー。デザートにはマーガレットお手製のアップルパイを食べながら、たくさんお喋りを楽しんだ。

 そうこうしているうちに夕方になり、ガーデンテラスで伯睿と二人、宿題や日記を広げて過ごしながら、一花は「今日の夕飯はなんだろう?」と考えていた。ラザニアだったら嬉しい。マーガレットの料理はどれも美味しいけれど、ラザニアは格別なのだ。

(そういえば、伯睿は何が好きなんだろう?)

 マーガレットの料理もそうだが、伯睿の好きなものをあまり聞いたことがない。一花は「今、質問していい?」と切り出した。

「伯睿の好きなものってなに?」
「俺の好きなものかぁ。……一花、かな?」

 彼はしばし考えると、突然悪戯っ子のような表情で、こちらを窺うようにそう言った。

「え……っ! え!?」

 何を言われたのかわからなくて、一花は石のように固まる。

「ふふっ、冗談だよ。……そうだな、俺の好きなものは、世界にある“美しきもの”、かな。例えば――翡翠だ」

 伯睿は左手の人差し指に付けていた指輪を、一花に見せた。

 内心、右往左往していた一花は、ほっと溜息をつく。
 けれど、冗談と言われたらちょっぴり寂しい。一瞬でも舞い上がってしまった自分が恥ずかしくなった。
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