御曹司のとろ甘な独占愛
第三章 薬指にとろける翡翠
「皆様、当機はまもなく台湾桃園国際空港へ着陸致します。座席のリクライニング、テーブルを元の位置にお戻しください」

 機内アナウンスから程なくして、座席モニターの画面が台湾入国規定の映像に切り替わった。
 せっかく映画を見ようと思っていたのに、いつの間にか眠っていたらしい。

(久々に、幼い頃の夢を見ちゃったな……)

 王子様のような伯睿の甘い笑顔を思い出し、胸がきゅうっと切なくなる。

 一花は、そんな想いから目を背けるように、飛行機の窓の外へ目を向ける。上空から見える台湾の海は、想像していたよりも清澄な色が広がっていた。

 ――伯睿との思い出が鮮やかな分、近づくことができなかった国。
 行ってしまえば一人で期待して、ひどく落胆するのは目に見えていたので、高校の修学旅行も、大学の卒業旅行も、ついつい台湾を避けていた。

(……それが、こんな風にここへ来ることになるなんて)

 飛行機はそのまま海を通過し山々を越えて、ゆっくりと高度を落としながら、徐々に都市部へ近づいていく。
 近づく高層ビル群を眺めながら、一花は本日のスケジュールを確認することにした。
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