御曹司のとろ甘な独占愛
 伯睿は目尻を下げ、眩しそうに一花を見つめながら、再会を噛みしめるように口元を綻ばせる。
 それから、彼は一花の手をとって、その甲にそっと口付けた。

「突然ですが、きみを攫いに来ました」

 耳触りの良い低くい声でそう言うと、一花の様子を伺うように、彼は色っぽくこちらを見上げた。

「あ……っ」

 どきどきと心臓の音がうるさい。

 一花は、胸の前で指を折り曲げて、きゅうっと握り締める。

「……これは夢?」

 一花はその場に立ち尽くしたまま、伯睿の端正な顔を見上げた。

(初恋の人が、唐突に目の前に現れて、突然こんな……私を、攫うって……どういうこと……っ!?)

 大人になった伯睿は、初恋の少年の面影を残しながらも、以前よりもずっと遠い存在に感じられる。
 お洒落なブリティッシュスタイルのスーツに身を包んだ彼には、爽やかなだけでなく華やかさも兼ね備えており、誰もが振り返るような存在感があった。
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