御曹司のとろ甘な独占愛
 一花はわけがわからず、伯睿を見上げる。
 伯睿は彼女の頬に手を添えると、眩しいものを眺めるように、そっと微笑んだ。

「俺の家です。今日からここが、一花の家」

「えぇっ!? だ、だって、社宅って、聞いて……??」

「ああ。一花の元々住む予定だった場所も、迎えの担当者もキャンセルしていますので、安心してください」

 あれはただの建前というか、目くらましだったので。
 そう言ってクスリと小さく笑むと、伯睿は一花の頬に添えていた手を滑らせ、彼女の髪を撫でる。

「攫いに来たって、言ったでしょう?」

 ふわりと心が浮かんでしまうような、甘い声。

「…………っ」

 一花は小さく唇を開く。
 十五年間恋い焦がれた相手が、目の前の、手の届く場所で、自分を甘く見つめている。
 自分に今、何が起こっているのかわからない。

「先に言っておくと。俺にはきみ以外に愛した女性はいないので。恋人もいなければ、結婚もしていません」

 恋愛初心者で申し訳ないです、と肩を竦ませる動作だけをして、今度はすぐに意志の強い瞳を輝かせる。

「俺は、あの頃からずっと――きみが好きです」

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