御曹司のとろ甘な独占愛
 トランクの中身を出し終えたはいいものの、今日から必要な物で揃っていない物も多くある。

「まずは、取り急ぎベッドを買いに行きたいんだけど……」

「ベッド? 俺と一緒に寝るのに?」

 伯睿は悪戯っぽく目を細めると、一花の腰を抱き寄せて、腕の中に閉じ込める。一花の額へかかっている髪を優しく撫でるように払うと、そこへ唇を落とし、彼女の横顔に顔を寄せた。

「十五年も恋い慕うだけの日々だったので。今更、遠慮する気はありませんから」

 耳元で低く甘く囁かれて、一花は全身がとろけそうになる。

(ううっ、心臓がいくつあってもたりないよ……っ!)

 力の抜けそうになる足元をどうにか保って、伯睿の胸元に寄りかかった。


「……伯睿って、もっと純粋な優しい人だと思ってた」

「今も十分、純粋で優しいつもりだけどな」

 伯睿は首を傾げて、とても嬉しそうに笑った。
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