御曹司のとろ甘な独占愛
「凄くお似合いですよ！」
「こちらはどうですか？」
「サイズ違いをお持ち致しますね！」

　着替えた後の余韻に浸る間もなく、めまぐるしく服装をかえ、アクセサリーをかえ、バッグをかえられて、一花はすでにフラフラだ。

　そんな様子の一花を、伯睿は至極幸せそうな表情で眺めている。ある時には彼が気になった洋服やバッグを一花の元へ持って行き、またある時にはソファに腰掛け、彼女が出てくるのを待ちながら過ごした。


　サロンに設置されている時計を見やれば、いつの間にか二時間ほど経過していた。
　一花はやっとソファに座り、「ふぅ」とため息をついた。伯睿の隣で、王さんに出していただいた紅茶を飲む。

「お疲れ様」

　伯睿は一花の顔を覗き込み、くすりと微笑んだ。

「一花様、お疲れ様でございました。本日はどちらのお品物になさいますか？　どのお洋服も素敵で、一花様にとってもお似合いでした」

　王さんに突然尋ねられ、一花はハッと現実にかえる。

　サロンに溢れる高級で煌びやかな品々は、自分が購入できるような値段のものではない。セミフォーマルワンピースの一着だって、買えるかどうか怪しかった。
　今までの夢心地から急に目が覚めたみたいな感覚に、自分はどうしたらいいのかと戸惑う。
< 67 / 214 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop