御曹司のとろ甘な独占愛
 一花は、こんな現実とは程遠い空間で、いつの間にか試着を楽しんでいた自分を恥じた。

「えっと……私、こんなに……どうしよう、あの……っ!」

 こんなに買えません……! そう言おうとした一花の唇に、伯睿がそっと人差し指を添える。


「彼女に似合っていた物を、全て下さい」


「かしこまりました。それでは、後ほど劉様のご自宅までお持ち致します」

「ええ。宜しくお願いします」

 伯睿の言葉に驚いて、一花は勢い良く彼の方を振り向く。

「そんな、こんなにたくさん買うなんて……無理だよ!」

「無理かどうか決めるのは俺です。一花は何も心配しなくていい。……それに、一花には十五年分のプレゼントをあげられていませんから」

 一花はたくさんのプレゼントに囲まれて、嬉しいような、切ないような気持になる。どんな表情をしたらいいのかわからない。

「……ありがとう…………」

 困惑しきった表情の一花を、伯睿は眩しく光る宝物でも眺めるみたいに、甘く見つめた。


「生まれて初めて、女の子にプレゼントを買いました。――喜んでもらえて、良かった」

 伯睿は微かに照れ笑いを浮かべる。
 それから少し得意げな少年のような表情で、くしゃりと微笑んだ。
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