御曹司のとろ甘な独占愛
 お風呂に入るといつの間にか緊張もほぐれ、ゆっくりすることができた。洗面所でドライヤーを借りて、髪を乾かしてから伯睿と交代する。

 一花は自室で明日の準備を整えてからキッチンへ戻り、懐かしい飲み物を作ることにした。ミルクパンに入れたミルクと、蜂蜜、シナモンの香りが部屋に漂う。

「……いい香りですね。もしかして」

 ふわふわした純白のタオルで髪を拭きながら、伯睿がキッチンを覗き込む。

「パーカー家のホットミルク!」

 二人の声が重なる。
 どちらともなく吹き出し、小さく笑い声を上げた。

 二つのマグカップに注いで、夜景の見えるソファへ座る。

 眼下に広がる台北の街並みを一望する。部屋の中で見る夜景は、色とりどりのネオンがキラキラと輝き、まるで宝石箱をひっくり返したようだった。

「……懐かしいな。きみを思い出す時、俺もよく作っていました」

「私も。伯睿を思い出す時、よく飲んでたの。……こうして一緒に肩を並べて飲める日がくるなんて……思ってもみなかった」

 あの時の私が羨ましがるだろうなぁ、と学生時代の自分を思い出した。

 マグカップから伝わる熱が、じんわりと心にも熱を灯す。
 どちらともなく互いを見つめ、視線を絡める。

 蜂蜜とシナモンの香りに包まれながら、二人は幼い頃を思い出すようにくしゃりと笑いあうと――今この瞬間をかみしめるように、伯睿の肩に一花は頬を寄せ、そんな彼女に伯睿が寄りそった。
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