御曹司のとろ甘な独占愛
 伯睿は体の片側に一花のぬくもりを感じながら、目を閉じた。

(夢みたいだ。一花とこうして、また、同じ時を過ごせるなんて)

 空港で一花を待ちながら、一抹も不安がなかったと言えば嘘になる。そんな不安も、彼女の蕾が花開くような笑顔に、全て吹き飛んだ。

 あの頃よりも何倍も綺麗になった一花に、胸が高鳴って仕方がない。
 長い睫毛が作るひっそりとした影を見つめるだけで、胸が締め付けられ、今にも腕に閉じ込めてしまいたくなった。

(こんなに想いが膨らんでいたなんて、気がつかなかった……)

 天真爛漫で飾らない素直な表情に、時折照れたような仕草や、感情の湧き出るような甘い笑みを見せる。そんな一花に、愛おしさがやまない。

 今はもう、過去の自分のように、一花の幸せをただ願うだけの自分ではない。この初恋を叶えるに価する、確かな決意と自信がある。

(幸せで胸がいっぱいで……嬉しくて、苦しいなんて)

 伯睿はそんな自分自身に苦笑して、ゆったりと流れる僥倖な時を享受した。
< 72 / 214 >

この作品をシェア

pagetop