御曹司のとろ甘な独占愛
 一花と寄り添い合いながら、しばらく夜景を眺めていると、伯睿の髪の毛先から雫がぽたりと滴った。
 ひんやりと冷たくなった頬に、一花はそろりと上半身を起こす。

「……伯睿、ちゃんと乾かさないと、風邪ひくよ?」

 一花は伯睿の首にかかっていたタオルを手に取り、彼の頭に被せた。やわやわと優しく髪の水分をタオルに移していく。


 心地よさの広がるタオルの下。
 伯睿は僅かにはにかんだような上目遣いで、一花を窺うように見つめた。幼い日々に、彼女に触れてほしくて仕掛けた……小さな悪戯を思い出す。

「実は……また、一花にこうしてもらえるかも。と、期待してました」

 伯睿は、悪戯が成功した少年のように屈託のない笑みを浮かべると、嬉しそうに打ち明けた。

 彼女の手から伝わるぬくもりに、伯睿は猫のように頬を寄せる。
 一花は一瞬言い淀むと、「もう……」と照れたように小さく呟いて、伯睿の髪を梳いて撫でた。
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