御曹司のとろ甘な独占愛
 そんな彼女の様子に、幸せな気持ちがじわりじわりと広がった。

「いちか」

 伯睿は甘美な時間に酔うように目を細めて、熱をはらんだ視線で一花を絡めとる。そうして、ゆっくりと顔を近づけると、桜色の唇を食むようにキスをした。

「……っ」
 
 伯睿の髪に添えられていた一花の手から、声にならない驚きが伝わる。

 ふるりと睫毛を震わせて、そっと伯睿を見つめ返した彼女の姿に、きゅうっと腹部が切なくなった。彼女のマシュマロのような唇を食むたびに、彼女の香りと蜂蜜の甘さが、理性を痺れさせる。


 伯睿は甘くついばむような口付けをしながら、涙の滲む一花の瞳を覗きこむ。

「……もっと、しても?」

「……あっ、その…………キス、だけなら……」

「ははっ。参ったな。――じゃあ、今日はキスだけ」


 伯睿は十五年の年月を埋めるように、彼女をぎゅっと抱き寄せる。

 今にも蕩けそうな唇に、そっと優しいキスをした。

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