御曹司のとろ甘な独占愛
 ダイニングテーブルに朝食を全てを並べ終えた時、伯睿が一花を捕まえて、腕の中に閉じ込めた。

「エプロン姿も可愛いですね。俺の奥様」

 甘く低い声音で囁くと、伯睿は一花の耳に口付けを落とす。

「わ、わ、わ……っ! は、早く朝ごはんにしましょう!」

(朝から、こんな伯睿の声、耳に毒だよ~っ!)

 一花はトキメキで胸がいっぱいになる。
 瞼に力を入れて、ぎゅっと目を瞑った。



「わっ、俺の家の食卓に一花の作った和食が並ぶなんて。……凄い。夢みたいだ」

 伯睿は、彼女の肩越しにテーブルを見て、感嘆の声をあげた。

「和食は好き?」

「ええ。昔、お祖母様が時々作っていたことがあって……あ、玉子焼き。懐かしいな。俺、大好きなんです」

 それから二人で席に着き、「いただきます」と手を合わせる。
 伯睿は一花が作った玉子焼きを一番に口に運んだ。

「……どうかな?」

 伯睿は懐かしい記憶を掘り起こすように一口目を味わい、それから今度は新しい思い出を作るように二口目を味わった。
 三口目には、愛おしさを噛みしめるように彼女へ破顔する。

「すっごく美味しい。これから毎朝、玉子焼きがいいくらいに」

「じゃあ、お言葉に甘えてしまいます」

 一花はくすりと微笑んで、お味噌汁を啜った。
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