御曹司のとろ甘な独占愛
 そうこうしているうちに、目的地へ到着する。

 本社ビル一階に入る、貴賓翡翠本店。フロアでは従業員が慌ただしく、それでいて優雅に開店準備の作業をしていた。

 まるで美術館のように、翡翠の色味・デザイン・グレード別に分けたカウンターショーケースが展示されている。日本貴賓翡翠東京本店に負けないくらい、いや、それ以上に豪華絢爛な内装に一花は溜息がこぼれた。

 伯睿が、中央に進み出て、両手を叩く。
 その隣に、一花は慌てて背筋を伸ばして並んだ。

《皆、集まってくれ》

 店内の社員たちが集まり、伯睿と一花の前に整列する。

《こちら、日本貴賓翡翠からきた山越一花さんだ。日本語が可能な販売員として、接客を担当してもらう。彼女とコミュニケーションをとるときは英語で。中国語は現在勉強中だそうだ》

 横目でちらりと伯睿を窺うと、いつもの甘い微笑みは消え、冬の湖面のように冴えた表情をしていた。
 声音もどことなく冷淡さを含んでいる。
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