御曹司のとろ甘な独占愛
《以上だ。皆、持ち場に戻ってくれ》

 一花の前では蜂蜜のように甘い目元も、冷静さが際立ち、終始鋭く感じられる。そんな氷の美貌を持つ伯睿の前に、社員は皆、一軍の将を前にした兵士のように誇らしげに並んでいた。
 伯睿は、ここにある全ての存在の何もかもを見透かすことができる男性なのだろう。そう感じざるを得ない威厳と緊張感が、そこにはあった。

 それぞれが持ち場に戻る中、一花は陳店長に案内され、店舗の出入り口に一番近いカウンターショーケースの前に配置された。

「イチカ、あなたの担当はこの辺り。まずはここから始めましょう」

 貴賓翡翠が初めてのお客様や、観光のついでに立ち寄ったお客様が、一番手に取りやすい商品が並ぶ場所だ。一粒の翡翠で作られたペンダントや指輪、翡翠をくり抜いて作られたバングルが色別に展示されている。

「日本からのお客様もここからお土産を選ばれる方が多いの。中国からのお客様も多いから、まずはこれらの商品をバッチリ中国語で紹介できるようにしてね。期待してるわ!」
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