御曹司のとろ甘な独占愛
「はい、わかりました! 頑張ります!」

 陳店長は商品の詳細が書かれたバインダーを一花に持たせた。

「それから……」

 一花は陳さんに着いて回り、店内についての必要な情報や会計システムについて一通り説明を受ける。
 それを終えてからは、自分の担当することになったショーケースの翡翠を、「より美しく輝かせるために、自分らしく展示しておいてね」と言い渡された。


 一花は、愛用の宝石取り扱い用の手袋を装着し、カウンターショーケースの鍵を開く。

 青竹色の翡翠、紫色の翡翠、白色の翡翠……グラデーションが美しく見えるように、自分がこうと思うように並べていると、店内で色々と指示を出している伯睿の背中が見えた。

 伯睿の後ろ姿は、ブリティッシュスタイルのジャケット特有の、高めの位置で絞られたウエストが作り出す背中のラインが美しい。
 細めながらカッチリとしたシルエットが、伯睿の誠実さや力強さを表しているように見えて、どこまでも魅力的だった。

 彼の指示で、従業員がテキパキとショーケースの中の翡翠たちを、あちらこちらへ展示しなおしている。

 この場所では、伯睿の華やかな存在感が強く際立って見えた。
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