御曹司のとろ甘な独占愛
「それでは、この例文を発音してみてください」

 伯睿に言われ、一花は「え~っと」とテキストを睨みつける。
 中国語の先生が日本人の生徒達を夕食に誘い、レストランで郷土料理を振る舞ったという内容だった。

《昨夜はお招き頂きありがとうございました。食べたことのない料理ばかりで、とても美味しかったです。
 こちらこそ、楽しい時間をありがとうございました。今度は皆さんで、私の家にも遊びに来て下さいね》

「……うん。残念だけど、完璧かな? じゃあ、今日はここまで」 

「やった! 今夜も授業ありがとうございました」

「どういたしまして」

 伯睿は顔を寄せ、一花の頭をよしよしと撫でた。

「でも、俺としては……」

 優しく撫でていた手を、伯睿は彼女の滑らかな輪郭へと滑らせる。顎にその長い指を掛け、クイっと僅かに上を向かせた。それから伏し目がちに彼女の顔を覗き込むと、艶やかな表情で微かに唇を開いた。

「ちょっとだけ間違ってもらっても、良かったんですが」

 甘さを含んだ低い声で囁かれ、一花は身体中にきゅんと熱がこもるのを感じた。
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