御曹司のとろ甘な独占愛
 ◇

 貴賓翡翠本店では、朝からゆったりとしたお客様の流れが続いていた。

 開店から一時間が経った頃。
 エントランスに立っていた制服を身にまとったドアマンが、店内に向かって扉を開く。

《いらっしゃいませ。ご来店ありがとうございます》

 年若い男性のお客様が一人、フロアに足を踏み入れる。

 一花や伯睿と同じくらいの年齢だろうか。亜麻色の髪に琥珀色の瞳の青年は、翡翠の並ぶ棚を目にすると、小さく笑みを浮かべた。

 上品なブリティッシュスタイルのスーツを着込み、伯睿のようにネクタイではなく、アスコットタイをふんわりと結んでいる。

 王子様のようにキラキラと輝いているのに、どことなく王様のような抗いがたい雰囲気があった。
 騎士のような王子様の雰囲気を持つ伯睿とは、まるで正反対だ。

 近づきがたい雰囲気ではあるが、彼が「なるほどね」と日本語を呟いたのを耳にして、一花は意を決して声をかけてみることにした。
< 92 / 214 >

この作品をシェア

pagetop