御曹司のとろ甘な独占愛
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 貴賓翡翠本社ビル、副社長室。
 劉伯睿は来月行われる台北貴賓ジュエリーショーの準備に追われていた。

 貴賓翡翠が開催するアジア最大の宝飾展には、世界各国から有名ハイジュエリーブランドや、有名宝石商などが出展し、多くのバイヤーや一般客が訪れる。

 その出展者や関係者だけが参加するレセプションパーティーで、代表挨拶を務めるはずだった父が「その日は急遽、香港へ飛ぶことになった。パーティーへは行けそうにない」と言いだした。

 優先事項を変更せざるを得ない仕事が何だかは知らないが、とにかく予定が変更になり、伯睿が代表挨拶を務めることになった。

 七月にはパリでオートクチュール・コレクション、いわゆるパリコレが控えており、その準備も忙しい。
 今年は『華翡翠』コレクション十周年記念セレモニーも予定されている。

 本来ならば出なくてもよかったパーティーの内容を確認しながら、伯睿は頭を悩ませた。

(お父様のせいで、途端に忙しくなった……。来月はここに缶詰かもしれないな)

 伯睿は各部署から提出された最終データと、出展者リストを確認していく。
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