御曹司のとろ甘な独占愛
 そんな中、タブレットからピロンと音が鳴り、警備室からの連絡が入った。

 今朝方、警備室から「怪しげな動きをする男女二人組が来店していた」という連絡を受けていた伯睿は、「確認するので、映像データをまとめてほしい」と警備室に返信していた。その結果報告だろう。

 世界の名だたる宝石商である貴賓翡翠の各フロアには、厳重な警備と監視システムの包囲網がある。本社ビルに警備室も設けられ、警備のスペシャリスト達が二十四時間体制で警備にあたってくれていた。

 警備員から結果に関して直接説明を受けるために、副社長室を出て警備室へ向かう。

「お疲れ様です、副社長。データ検証が終わりました。先週金曜日に来店していた男女二人組は、先月半ばにも来ているようです。低価格帯の翡翠を大量に購入している様子でした。ご確認下さい」

 数十台のモニターが並ぶ部屋で、警備員の一人が伯睿へ映像データを見せた。

「……なるほど。それ以前は?」

「ここ三ヶ月の映像データを解析してみましたが、三ヶ月前には来ていないようでした。もっと遡りますか?」

「いや、ここまでで」

 確かにかなり怪しい様子だ。今後も少なからず警戒が必要だろう。

 多くの国に、翡翠の密輸者や代行販売者がいると聞く。質の良い貴賓翡翠の翡翠を買い占め、どこかで誰かが利益を得ている可能性もあるのだ。
 翡翠は誠実に愛されなければ、その価値は何方にも転がっていく。
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