不誠実なカラダ
「なんだかこう言う事してると、恋人同士みたいですね。」

私は泡がついたまま、部長の体を抱きしめた。

すると部長は、私の体を引き離した。


「部長?」

「こう言う事は、しないでくれ。」

「えっ?」

私は、部長を見上げた。

「……好きになられたら、困るんだよ。」

私の胸に、チクッと何かがささった。


部長は何もなかったように、体を洗い流して、さっさとお風呂場を去ってしまった。

一人残された私は、またバスタブに戻った。

温かいはずなのに、寒い。

両足を組んでも、温かくならない。


「……ヒックッ。」

寂しい。

部長をセフレに選んだのは、どこかで、この人だったら心の隙間を埋めてくれるかもしれないと、思ったから。

でも、埋まらない。

心の隙間は、好きな人じゃないと埋められないの?

私の隙間を、埋めてくれる人は、いないの?

泣きながら、私は自分の惨めさを恨んだ。
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