不誠実なカラダ
「気のせいだよ。」

「そんな訳ないじゃない。私が心を見間違える事ない。」

尚太の左右を、交互に見て、やっぱり心だと確信した。

「心!」

私は、思い切って心に声を掛けた。

「環奈……」

心は私に気づいたのに、後ろへ下がっていく。


えっ? 何で?

何か、私に見つかってまずい事でもあるの?


「どうしたの?心。一人で来たの?」

「う、うん……」

心は動揺しているのか、目が泳いでいる。

私はそれがなぜだか、分からなかった。

「こっち来て、一緒に飲もうよ。」

私は、手招きをした。

そして、心はゆっくりとこっちに来た。


不思議な事に、近くに来ても、ただぼうっと立っているだけだ。

「隣に座ったら?」

「うん。じゃあ、お言葉に甘えて……」

心は、私の横に座った。

「どうしたの?今日。心、この店来た事ないって、言ってなかった?」

私は、心の顔を覗いた。
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