妄想は甘くない
見開かれた自分の目を、停止してしまいそうな心を、ゆっくりと自覚している内に追い討ちを掛けるように続けられる。
『茉莉さんの好きにしたら良いよ』
その言葉は胸を突き刺し、心が粉々に砕けてしまったような錯覚がした。
思い掛けず涙が頬を伝っていて、彼に気付かれないように、声が震えないように堪えた。
「……うん……そういう女なの」
『…………』
「さよなら」
怖くなって一方的に通話を切ってしまった。
──これは、わたしが望んだことだ。
その通りになっただけ。
なのに、どうして涙が止まらないんだろう。
ぐっと閉じた瞼から溢れ続ける涙が、顎から太腿へ滴り落ちて部屋着を濡らした。
姿の見えない彼がどんな表情をしているのか、これ以上何を言われるのか、聞いていられなかった。
ずっと“言うこと聞いて”と命じた彼が、もう言わない。
放してくれたと、気が抜けて細めた瞳に光が差したと同時に、闇に突き落とされたような絶望に囚われた。
手を放されることを、わたしが望んだのに。