妄想は甘くない

ひと思いに描き切ったシーンは思いの外、反響があった。

「なんか……読者の人、増えてる……」

ローテーブルの上のノートパソコンをまじまじと覗き込む。
正直なところ、我ながら今まで書いていたものが薄っぺらく感じた。
更新が止まる以前の部分を読み返して感じた、この現実味の希薄さ……さすが処女、と自嘲気味にひとり薄ら笑う。

自らの空想の産物を改めて目で追い、背中を曲げて机に顎を乗せると溜息が漏れ出た。

「……いいな、幸せそうで……」

そもそもこの話、どうやって終わらせるつもりだったんだっけ。

休息に淹れたミルク多めの紅茶のカップに口を付けて、ほっと息をつく。
頬杖を付いて、微かに暖かな湯気の立ち上る方向へと視線を泳がせ、思い起こす。

予定では、ライバルに邪魔されたりすれ違ったりはするけれど、最終的にはハッピーエンド……だったはず。
美人でもてはやされ慣れている女子と自分とを比較して、自信が持てなくて落ち込んでしまうといった展開を考えていたけれど。

そこまで振り返り、脳内を漂った違和感が考えるよりも先に口から漏れ出た。

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