妄想は甘くない

「……彼と気持ちが通じているなら、ライバルなんて別に……蚊帳の外の人……」

ぶつぶつと独り言を零しながら、伏し目がちにキーボードへ落としていた瞳が次第に見開かれた。
動きの止まった指先を見つめたまま、暫し逡巡する。

──もしかして、自分が自分を蚊帳の外へ追い遣っているのだろうか。

思い至ると胸がズキズキと痛み、苦しさから小さく溜息が吐き出された。
険しく眉間を寄せた瞼の奥の、瞳が揺れている感覚に囚われる。

小説の中でなら、相手の気持ちを自分が決められるから、自信を持つことが出来た。
一番怖いのはライバルなんかじゃなく、自分……。

頭を過ぎると共に瞼をきつく閉じ、身を縮こまらせた。

自分に勝てない、負ける。
わたしはこんなに強くない。弱い──

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