妄想は甘くない

嬉しそうにはにかむ関根さんを目に映しつつも、想定外の話の展開に睫毛を瞬いた。

「あっもちろん、それ私じゃなくてリーダーなんですって訂正してます」
「…………」

それって……リーダーがわたしだって、解って……?
もしかして大神さん……前からわたしのこと知ってた……?

手元の書類の一点へ目線を落とすと、バラバラの記憶のピースを繋ぎ合わせるように脳内を巡らせた。

……いやでも、最初に請求書を渡した時、わたしの顔が解らなくて探してたんじゃ……。

『俺は、信頼してます』

彼のあの台詞から考えると辻褄は合うのかもしれないが、大神さんがどこまでを把握しているのか、いまいち釈然としなかった。
第一それをはっきりさせたからと言って何だと言うんだと制して、胸の奥へ仕舞った。

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