妄想は甘くない
いよいよ明後日の土曜日に迫った近藤の結婚式の話題で、昼休みは持ちきりだ。
金曜日は有給を取って、入籍や最終準備を済ませるらしい。
わたしの他にも同期が数名出席する程度にしか把握していないが、社内恋愛なので新婦側のみならず新郎側も会社の人間を多数呼んでいるようだ。
「そうそう、ふたりに受付係の詳細送っておきましたので」
「粗相のないように頑張るね。ドレス姿、楽しみにしてる!」
わたしは同期の女子と共に、受付をお願いされている。
弁当のおかずのアスパラベーコン巻を口に運びながら笑顔で応えたが、唐突に間が出来たかと思うと、自分の色事に飛び火して驚いた。
「……宇佐美の恋愛はどうなの」
「……え? ……この間から特に変わりは……」
「……本当に王子と決着ついたの?」
ずっと切り込むタイミングを図っていたのかもしれない。
前の人の、心配が入り交じりつつも鋭い眼差しが刺さって、冷や汗が流れた。
「…………わたしは……ひとりで居るって決めた……」
目を合わせていられずに、俯いてか細い声を絞り出すと、追求が厳しくなる。