妄想は甘くない

「!?」

ガシャンと何かが落下する盛大な物音がして、弾かれるように後ろを振り返った。

「ごめんなさい!! 大丈夫ですか!?」

ぶつかって来たらしい男性がわたしに駆け寄り、慌てふためいている。
躓いたのか定食を食べ終わった後の皿や箸が、床にぶちまけられている。
弾みで自分の席から何か落ちたようだけど、それよりも飛び散った汁が気に掛かった。
目線を下げると制服のスカートが、オレンジ色の液体で濡れてしまっている。

「きゃあっ! ドレッシングが……」

「早く洗った方がいい」

頭上から振って来た低い声の主を目で追うが早いか、背中をその骨張った手に押され立ち上がらされた。

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