妄想は甘くない

……誰、この人。
タメ口??

目の前で蔑んだように口の端を歪めたこの人が大神さんだとは信じられず、冷や汗が流れる。
あの晴れ晴れとした笑みを浮かべていた優しい男性は何処へ行ったの……?
わたしこれでも先輩なんだけど、いやそれよりこの人何処まで感付いて……頭をぐるぐると疑問が回るものの思考が追い付かず、こめかみを押さえ目を瞬いていると、美しい唇から何とも嘆かわしい台詞が吐き出された。

「要は俺で妄想して際どい小説書いてたってこと? 案外エッチなんだねー宇佐美さん」

冷淡な瞳にずばり核心を突かれ、あまりの衝撃に頭がくらくらして倒れはしないかと過ぎったが、そこまで繊細ではなかった。
いっそ気を失いでもしたかったのにそれは許されず、彼への対応を迫られている。

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