妄想は甘くない
絶え間ない豹変
『覚悟して下さいね』
大神さんがそう吐き捨て去ってから、4日。
「あ、ホラあの人ー……この間食堂で大神さんと……」
何処からか女子社員達のひそひそ話が耳に入って来るのは、何度目だろうか。
あんなに噂の標的にされないよう気を配っていたのに、今のわたしにとってはどうでも良かった。
彼は王子様なんかではなかったと知ってしまったショックの方が、断然大きかったからだ。
今後弱味につけ込んで脅されるかと思うと、常に怯えが付き纏い、いつどんな危機に晒されるか内心穏やかではなかった。
特に彼からの動きは見られなかったが、仕事上でも神田さんに伝言をお願いしたりと、可能な限り彼との関わりを回避するよう努めた。
リーダーでありながら公私混同も良い所だが、機密事項が社内に知れ渡り仕事を続けられなくなることを想像すれば、構っちゃいられない。