妄想は甘くない
翌木曜日、業務も後半に差し掛かろうかという気忙しい昼中、いつもの如く福地さんが縋るように小走りで寄って来た。
システムで入金をマッチングさせていた手元を中断し、顔を上げる。
「宇佐美さぁん! この、未入金リストのお客様に電話したら、払ってるけどって仰ってたんですけど~……」
「何日に払って貰ったか聞いた?」
「それは聞いてないです」
「……入金処理の確認しないといけないから、そこは聞いておいて貰わないと……」
まだ担当エリアを受け持っていない彼女には、わたしの仕事の中から幾らかピックアップして振っている状態だ。
何度同じ注意を繰り返しているのだろうか、最早思い出せない程である。
この子にはもっと場数をこなして慣れて行って貰うべきなのか、適切な育成方法を図りかねていた。
自分のコンディションも優れない中で、思い掛けず溜息が漏れてしまう。