妄想は甘くない
余りの賞賛ぶりに、その顔は直視出来ず赤く染まった顔を背けた。
未だかつて、これほどに女性としての自分を褒められたことがあっただろうか……?
透き通った美しい黄金色のスマートなグラスに、うっとりと高揚した心持ちで指を伸ばすと、隣の人が補足した。
「安心して下さい、それお酒じゃないから」
「……本当?」
わたしの反応が不本意だったのか、面白くなさそうに肩を竦める。
「やっぱ、信用ないなぁ。ノンアルコールシャンパンとジャスミンティーのカクテルです。さっぱりするかなって」
「……お酒、飲ませないんだね……」
「酔わせてどうこうってのは、俺のポリシーに反する」
意地悪なのに時折フェミニストぶりが顔を覗かせてずるい。
この人には敵わないと心で負けを認めているのは秘密だ。