月曜日、いつもの席で。
「……悪いけど、俺このあと用事あるから。
七瀬さん、お会計」
榎本さんが、急に立ち上がって、荷物をまとめ始めた。
「えっ、あっ、はい!」
待って。いろいろ話が急展開すぎてついていけない。
焼き鳥まだ残ってますけど、とか
後輩さんたちと飲まなくていいんですか、とか
「いつもの」以外の言葉初めて聞きました、とか
言いたいことがいっぱいあった。けど。
今……、私の名前、呼んでくれた。
私の名前、知ってくれてたんだなぁ…。
なぜかそれが妙に嬉しくて。
私は自分でわかるほど赤くなった顔を隠すように、
少し下を向きながらお会計を済ませた。
ガラガラガシャン
彼はいつもより30分も早くここを出ていってしまった。