月曜日、いつもの席で。
「すみません、今日はもう閉めちゃいますよね…?」
暖簾に頭をぶつけないようにするように、少し身を屈めながら、榎本さんが私に尋ねる。
「あっ、いえ!あと、あと30分あります!!」
こんな近距離に榎本さんがいる。
そのことにドキドキして、勢い余って早口で言ってしまった。
そんな私の慌てように、榎本さんは一瞬キョトンとして、
クスッと笑った。
「じゃあ、お言葉に甘えて。」
うわ、笑われた!恥ずかしい………
かあっと顔が熱くなるのがわかる。
あ、でも、今………笑ってる顔、初めて見た…。
「拓ちゃん、きょうは随分遅かったじゃないの。
もうお客さんいないから、貸しきりだなあ!」
店長が嬉しそうにがははと笑う。
「悪い、店長。仕事長引いちゃって。」
私は席の準備をしながら、店長と榎本さんの会話を聞いた。
榎本さん、あんな風に優しく笑うんだなあ。
店長とあんなに楽しそうに話すんだなあ。