月曜日、いつもの席で。
「沙夜華ちゃんね、今日拓ちゃんが来ないからずっと残業して待っててくれたんだよ」
「ちょっ、店長!?なに言い出すんですか!!」
さ、最悪!これじゃ私がまるで…!
…………まるで、榎本さんのこと………。
「えっ、そうなの?」
榎本さんの驚いたような声にハッとする。
「あっ、あの!これ!お返ししたくて!」
私は慌てて榎本さんの手袋を差し出す。
「せ、先週、お忘れしてて…。同じ会社のかたに預けようと思ったんですけど、破れてる部分があって、勝手に直しちゃいました…。」
すみません、と赤い顔を見られないように深々と頭を下げながら手袋を差し出した。
「……………」
榎本さんは、なにも言わない。顔が見えないから、どんな表情をしてるかわからない。
…やっぱり、迷惑だったかな。
「ありがとう…。七瀬さん、ありがとな」
手のひらに、手袋が受け取られる感覚があった。
そっと顔を上げてみると、さっきよりも優しい、榎本さんの笑顔があった。
…ドキッ……
その榎本さんの笑顔に、胸が締め付けられたように痛くなった。